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2010年11月 アーカイブ

屋久島の民話

屋久島の民話、『かくれ笠かくれみの』を紹介します。


宮之浦岳の手前の障子岳に、むかし天狗が出るといううわさがはやりました。


その天狗はかくれ笠かくれみのを着て、人間の目では見えないといわれていました。


ある日、宮之浦の二才どもが集まって、


「いけんして、その天狗があっかあらんかたしかめて、そのかくれ笠かくれみのを手にいれてこんにゃいかん。そしてそいを薩摩の殿さまに上げれば、たいしたほうびじゃ。」


「そうじゃ、そうじゃ。」


「じゃばってん、だれがそれを取いけ行くか。」


「そんたア知恵の彦一でなかや取れん」


という話しあいになりました。


ところで、知恵の彦一といわれるわけは、あるとき、二才どもがより集まって狸料理をして食べるとき、一人が、


「狸の目は毒じゃ」


というのでした。


その鍋にも狸の目がちゃんとはいっています。


すると彦一が、


「毒でも何でもあいが食ってみよう」


といって鍋から狸の目をすくいあげてむしゃむしゃ食べていましたが、急に口から泡を吹きだして彦一は倒れてしまいました。


「彦一が死んだア。」


「こら、つまらん。はよ逃げ。」


みんなあわてて逃げてしまいました。


ところが彦一はゆっくり起きあがって、にこにこ笑いながら鍋と竜家にもって帰って、


「狸汁はうまか、狸汁はうまか」


といいながら全部平らげてしまったのです。


あとでこのことを知った二才どもは、あいた口がふさがりません。


それから知恵の彦一というようになったのです。


さて、障子岳の天狗のところへ行くことになった彦一は、から芋、ミソ、魚などを背負って、三日三晩の山登りのつもりででかけることになりましたが、


「ただ行くだけじゃ天狗の気に召さん。かくれ笠かくれみのをもろうならば、こっちからも何かもって行かにゃならん。」


こういいながらあたりを見まわしましたが、めぼしいものは何もありません。


ところが、流し場を見たら、竹をあんで作ったミソコシがありました。


「ええ、このミソコシでも持って行け。」


それから彦一はそのミソコシをかぶって、二才どもに見送られて宮之浦をあとにしました。


白銀山を通り、羽神岳を越え高塚の屋根を越えて、障子岳にやっとたどりつきました。


しかし、天狗はどこにあるかさっぱりわかりません。


障子岳のてっぺんにはツガの木が一本あるだけです。


近くの岩屋の中に宿をとった彦一は、


「いよいよ天狗があれば、あのツガの木に来るにちがいない」


といって、その晩は岩屋にあとなしく寝ました。

屋久島の民話 2

あくる朝、夜が明けるのを待って、彦一はツガの木のてっぺんに登って、ミソコシを縦にすかしたり横にすかしたりして見ながら、


「うあっ、あ江戸が見えた。うあっ、西京が見えた。うあっ、くらまが見えた。こらあもしょかど」


といかにもおもしろそうに、大声で叫びました。


すると、


「あい、そこのツガの木にあんもんなだれか」


と天狗の声です。


それを聞いても彦一は知らんふりをして、やっぱりミソコシを縦にし横にし、おもしろそうに叫んでいたら、天狗がツガの木の真下まで来て、


「あい、わやなんちゅうもんか。」


「あいか。あや彦一というもんじゃ。」


彦一はそれからまたミソコシをすかして、


「うあっ、くらまが見えた。うあっ、カラス天狗が見えた。うあっ、鼻高天狗が見えた」


と叫びますので、天狗は見たくてたまりません。


「彦一、わいがミソコシをあいにゆずってくえんか。」


「話によっちゃ、ゆずってもよかが。」


「いけんすっとか。」


「天狗さんのかくれ笠かくれみのとかえてくれればミソコシをやんが。」


「そんたでけん。」


「そいじゃこっちもでけん。」


「そいじゃ、いっときかえてみろう。」


そこで、天狗がかくれ笠かくれみのを彦一に渡して、


「ほら渡したから、そのミソコシをやれ。」


「いや、かくれ笠かくれみのをどげんして着んもんか、着てみらんと渡しはならん。」


こういって彦一は、こっちの緒をしめ、あっちの緒をしめして、天狗から着方をあしえられて、すっかり着終ったところが彦一の姿は見えんようになりました。


「あい彦一。」


「あい。」


「ミソコシを渡せ。」


「あい。そらっ。」


ミソコシが天狗の足もとにひょいと飛んで来ました。


天狗は大喜びで、ヅガの木のてっぺんに登ってミンコシをすかして、右を見、左を見してみましたが、見なれた屋久杉の御岳とシャクナグの山が見えるばかりで、江戸も西京もくらまも少しも見えません。


「ああい、彦一、あ江戸も西京もくらまもなんも見えんが。」


「ああ、そんた人間が見いもんじゃから、天狗は見えんとじゃ。」


天狗は彦一にまんまとだまされて、


「うう、彦一、だましたか。」


地だんだふんでくやしがり、カンカンに怒りましたが、彦一の姿は見えず、どうすることもできません。


「あはははは。かくれ笠かくれみのはもろたよ、天狗どん。あはははは。」


彦一は高笑いの声だけを残して、山をどんどんありてしまい.ました。


彦一が天狗からぶんどってきたかくれ笠かくれみのは、宮之浦の二才どもの手をへて、薩摩の殿さまに上げたら、殿さまはたいそう喜んでたくさんの賞品をくれましたそうじゃ。


かくれ笠かくれみのが今にないところをみると、火事にでもあって焼いてしまいましたとじゃろ。


・・・


屋久島ツアーでも人気の屋久島の民話、『かくれ笠かくれみの』でした。


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